すし種の「小柴のシャコ」が激減…海底を調査へ
横浜市金沢区の柴漁港に水揚げされ、江戸前のすし種として有名な「小柴のシャコ」の生産量が激減し、神奈川県は今年度から、生息する東京湾の海底の本格調査に乗り出した。
酸素不足が原因
激減の原因は、海中の溶存酸素量が極端に低くなる「貧酸素水塊」とされ、調査では、この現象を解消するのに有効な海底の地形についてデータを収集し、国に対策を提案する。
「小柴のシャコ」は、その甘みの強さや品質の良さですし職人などに人気がある。「全国あちこちでシャコを食べるけど、小柴のシャコが一番おいしいね」。横浜市漁業協同組合柴支所長の宍倉昇さん(68)は誇らしげに語る。
同漁協によると、最盛期の1989年には、約10匹詰めのトレーで190万4000枚も出荷されていた。他産地のものと比べ約2倍の値がつくこともあった。だが、近年は激減し、2006年頃には自主的に全面禁漁にして回復を図ったが効果が出なかった。以降も禁漁と操業を繰り返してきたが、ここ2年の生産量はゼロ。本格的なシャコ漁は再開されないままだ。
県によると、貧酸素水塊は主に夏から秋頃にかけて発生する。水温の上昇で大量発生したプランクトンが、死滅して海底にたい積し、分解時に海水中の酸素を消費することで起こる。貧酸素水塊は海底に広がりやすく、近年は温暖化の影響もあって発生時期が長期化。シャコの幼生が着底する時期と重なり、成長を妨げている。
今後の対策は
一方、これまでの調査などから、海底でも山状の地形では貧酸素水塊が発生しにくいことが分かっている。そこで県は、今年度から3年間かけ、海底生物の生息状況を調査するとともに、山状地形の効果を検証。現象の解消に有効な山の高さなどの科学的データを集め、人工的に山状地形を海底に造成する対策を国に提案する。調査地点には、くぼ地や平地など多様な地形が狭い範囲にあり、「東京湾の縮図」(県水産課)とされる根岸湾(横浜市)沖を選定した。
今年はシャコ漁が操業される予定。宍倉さんは「昨年よりは網にかかるシャコは多い」と話し、「シャコのおかげで潤ってきた港。なんとか元に戻ってほしい」と復活に期待を寄せた。
執筆者:脇西琢己
出典:YOMIURI ONLINE