SUSHI TIMES

正しく説明できる?「関西寿司」と「江戸前寿司」の違い

しばしば出汁の違いで話題となる「関東風」「関西風」の料理。実は日本食の代表である寿司にも東西それぞれ名作があることをご存知だろうか。寿司の定番である握り寿司にもその名残があるのだが、握り寿司がそもそも「関東寿司」にあたる。それでは一体、「関西寿司」とはどのような寿司なのだろうか?

1. 関西の寿司は「発酵系」

実は握り寿司は比較的新しいスタイルの寿司で、その発祥は江戸時代の関東だ。このため握り寿司は「江戸前寿司」と言われる。

寿司の元祖は関西寿司

関西寿司は歴史を遡ること平安時代、寿司の原型である「熟れ鮨(なれずし)」の伝統を受け継いで進化してきた。魚を発酵させ長期熟成する熟れ鮨は、作る時間がかかるがそのぶん、保存性も高い。関東では、すばやく作れてすぐ食べきる江戸前寿司がうまれたが、関西では真逆の発想で、作る手間や時間がかかるが、すぐ食べなくても大丈夫な保存性の高い寿司に進化した。
押し寿司、箱寿司の誕生
江戸前寿司は東京湾(=江戸前)でとれる豊富な魚介を利用したのに対し、関西ではサンマ・アジ・サバといった定番の大衆魚を発酵させたり漬けたりして、木型で押して成形する押し寿司だった。そこに瀬戸内の魚や穴子、海老、さらに具として厚焼き玉子や煮椎茸等を加え、木枠に美しく敷き詰めて形作る箱寿司が生み出された。後に「巻き寿司」「バッテラ」「棒寿司」の普及と共に総称して関西寿司(大阪寿司)とよばれるようになったのだ。

2. 江戸前寿司との違い

関東の江戸前寿司と関西寿司にはそれぞれ特徴があるが、それが地理や文化を反映したもので理にかなっており、大変面白い。
住人の気質の差
今も昔もそんなに安くはない寿司。それでも庶民が寿司を食べたがるのは変わらない。関西はのんびりした京都の気質や商人の気風が強く、ある程度日持ちのするスタイルを好んだものらしい。しかし江戸っ子は短気でせっかちだ。このためすぐ作れてすぐ食べられる新しいスタイルの寿司が大当たりした。昔の握り寿司は、忙しく働く職人たちの腹を満たすためひとつのサイズがかなり大きく、一貫だけ食べてすぐ仕事に戻るのが江戸の町人流。まるでおにぎりである。
対する関西は行楽用
ファストフードの江戸前寿司に対し、関西寿司は店頭で食べる物ではなく、折り詰めとして持ち帰るのが主流だった。このシチュエーションの差こそが東西での大きな違いである。花見、行楽のお供、そして芝居見物の幕間に食べられることが多かった箱寿司には、見た目の美しさやある程度の保存性が求められた。

3. 今も残る名残

今では関西も握り寿司が主流となったが、その握り寿司にも東西の特徴差がそのまま残っている。
シャリが違う
時間が経ってから口にすることが多かった関西寿司では、シャリの乾燥を防ぐために砂糖を多めにする傾向にある。酢飯にしっかり味をつけていた関西では、握り寿司になっても、いまだにシャリは甘めのようだ。江戸前ではネタに煮切りというタレを塗ったりするので、シャリはごくあっさりとしている。
ネタにも特徴がある
関東でよく目にする昆布〆やヅケは関西ではあまり見られず、素材そのものの味を楽しむ傾向にある。瀬戸内海では淡白な白身魚が新鮮なうちに入手しやすく、鮪の関東に対して白身の関西といったネタ自慢があるのだ。関西寿司では、ぜひ新鮮な白身の魚を楽しもう。

結論

握り寿司を外で食べるのは少し贅沢なものだが、江戸前寿司しか食べたことのない人が関西の寿司屋へ行くと驚くことがあるようだ。
注意してみると白身の魚が多いし、シャリそのものにしっかり味がついている。淡白な白身魚に味の濃い酢飯は美味しいものである。好きな寿司ネタに合わせて東西選ぶのもおすすめだ。

出典:オリーブオイルをひとまわし