地理的な理由だけではない?日本人はどうして昔から魚介類をたくさん食べるのか
日本で海産物が好んで食べられたのは地理的な理由だけではない
さて、日本は海に囲まれた島国であり、魚介類が豊富に採れたため、寿司に限らず古来より多くの海産物が食べられてきました。このように日本で海産物が好んで食べられたのは、地理的な理由だけではありません。そこには日本の社会と文化の影響がありました。
例えば、奈良時代以降、明治に入るまで仏教の影響で一部の肉食が禁止され、さらに土地が肥沃で農耕に適していたため牧畜もそれほど発達しなかったという理由があります。
また、日本人の食卓におなじみの海鮮料理の代表ともいえるのが「刺身」ですが、刺身の普及には、日本の伝統技術も関係しているようです。それは、刺身が日本で生まれたしょうゆとの相性がよかったこと、また熟練された刀工技術から切れ味の良い包丁が普及していた背景があげられます。
このように、日本で魚介が好まれて食べられるようになった背景には、地理的要因だけなく社会や文化、伝統技術も大きく影響しています。
節目や祝いの席で海産物に意味を与えて重宝していた
また、節目や祝いの席で、海産物に独自の意味を与えて重宝したのも日本人のユニークな側面です。
例えば、お祝いの席に「タイの尾頭付き」を食べる風習もその一つ。尾頭付きとはその名のとおり、尾も頭もついた1匹丸ごとの魚のこと。お祝いの席や食事の席の食事や神様に捧げる供え物として出され、切り分けられてないことで縁起が良いとされています。
また、使用される魚が、高級魚の鯛であるのは「めでたい」という語呂合わせからきていると考えられています。ちなみに、この鯛の尾頭付き、盛り付けるときは頭を左、尾を右にするのが古くからのしきたりになっています。
これは、古来より日本人は左を上位と考えてきたことからで、食べるときも左から右、つまり頭から尾へ箸をつけるのが作法といわれています。一匹丸ごと食べることから「1つのことを最後まで全うする」という意味もあるのだとか。
また、お祝いの席で「かつおぶし」を贈るのも日本人独特の風習。この風習にも日本人独特の解釈がなされています。
かつおぶしは3枚におろしたカツオをさらに背側と腹側に切り分け、背側を雄節、腹側を雌節と呼んでいますが、この雄節と雌節を合わせたときにぴったり合わさることから夫婦の象徴とされ、「鰹男婦節」と呼ばれることもあります。
また、雄節と雌節を合わせるとカメの甲羅のように見えることから長寿、さらに「勝つ男(かつお)」という当て字から、男の子が産まれた家庭へのお祝いの品として贈られることもあります。
日本人と魚介類とは、昔からの深いつながりがあるのですね。