江戸前のネタは今が旬!鮨ネタランキング1月編 -SUSHI TIMES ORIGINALS-
魚市場も初競り初競りなどで市場が1年のうち最も賑わう1月。新年を迎えると満を辞して極上の鮨ネタが続々と入荷されてきます。1月に旬を迎える寿司ネタを頭に仕込んで、お鮨屋さんへ急げー!
金目鯛
実はその生態は謎だらけな高級魚
体はまるで染めたように美しい朱色、大きな目は金色に光る金目鯛。 金目鯛は実は「鯛」の仲間ではありません。水深数百メートルの深海底に生息する深海魚で、キンメダイ目キンメダイ科に分類されます。一般には広く知られた魚であるにも関わらず、その生態は謎だらけなのだそう。 寿司店や和食店などで高級食材として利用されることが多い魚で、全く癖が無い食べやすい味わいをしており、脂の部分の甘みが強いのが特徴です。小骨が少ないため食べやすく、味も良いので高級魚として取り扱われています。
キンメダイは年に2回旬の時期があり、そのひとつが12月から2月までの冬の季節!(もうひとつは5月から6月までの産卵前の時期)いずれの時期も脂ののりが良くなるため、美味しく食べることができます。 冬に旬を迎えるのは静岡県で獲れるキンメダイで、伊豆地方近海はキンメダイの餌が豊富にあり、冬の寒い時期に向けて餌を沢山食べたキンメダイはたくさんの脂がのって非常に美味しいと言われています。 旬の金目鯛は、身の食感はもっちり・脂の甘さ旨味を強く感じるため刺身や握りでいただくのがベスト!非常に良い出汁が出るため、汁物や煮物などもオススメです。 鮮魚店などで購入する際には以下のものを選ぶようにしましょう。
①目の透明度が高い
②皮と身の間に白い脂(サシ)がある
③エラが赤色④体色が鮮やか
「江戸前鮨」としては新参者。職人の個性が味を大きく左右する
いまや江戸前握りの世界でも高級ネタとして盤石の地位を確立しているキンメダイですが、実は鮨種としては新参者。伝統的な江戸前鮨店よりも若手職人さんのお店で使われるのが一般的な魚です。
キンメダイは深海に棲んでいるため、昔の手漕ぎ船や設備では獲ることが出来ませんでした。
さらに、金目鯛は身がゆるく脂が多い魚なので、昔は鮨職人から嫌われていたとか?
急激に人気が高まった理由は、現代人が魚の脂を好むようになった為でしょう。強い脂を持った魚は、シャリの酸味とが合わさることでいわゆる「乳化」に近い状態となり絶品です。
脂がのっていてその脂がとろっと甘く、身質は柔らかいのにしっかり噛みごたえがあって、シャリとの相性も抜群。
また、美味しく握るには職人さんの仕事がとても重要。塩や昆布で適度に脱水もしくは〆る・炙り・湯霜といった仕事を確立した職人さんの功績もとても大きいです。
塩にせよ昆布にせよ、職人さんがどう〆るかで旨味と食感が大きく変わり、職人さんの個性が表れるキンメダイ、是非鮨店でいただきたい一品です。
出典;すしログ、ぼうずコンニャクのweb寿司図鑑、つきぢ神楽寿司
甘えび
成長過程でオスからメスに性転換!?
正式名称は「北国赤海老(ホッコクアカエビ)」と呼ばれる甘えび。
味は名のとおり、とろけるような甘みが特長で、甘みの成分となるアミノ酸類が多く含まれています。高タンパクで、成人病予防の成分として期待が寄せられるタウリンも豊富、栄養面からみても貴重な食材です。
そんな甘えびは、成長過程でオスからメスに性転換する不思議な生物。3歳まで性別がなく、4~5歳はオスになりメスの甘えびと交尾を始めます。5歳以降からメスになり、オスの甘えびと交尾後、卵を抱えるようになります。このオスからメスへ変わる5歳の甘えびは、とても身が引き締まり美味しいと言われています。
基本的に甘えびの旬は冬ですが、各産地の海流・地形・気候等の影響で、旬の時期が少し異なります。この時期に美味しいのは新潟県、石川県、富山県産の甘えびです。
以下のようなものを選ぶようにしましょう。
①頭が付いているか
②頭がグラ付いていないか
③身にハリがあるか
⓸殻が透明か
⑤ツヤがあるか
甘えびの鮮度は頭でわかります。鮮度が落ちると頭の付け根が緩み、グラつきます。頭がない甘エビを選ぶ際は、尾が黒くなっていないものが良いです。また、甘えびの鮮度が落ちるにつれ、身が痩せハリが無くなるるため、殻と身の間に隙間がないかも大切です。
甘くてぷりっとした食感を楽しむため生で食べられることが多い甘えび。寿司ネタにピッタリの食材です!
1貫に3日かけることも。手間が生み出す極上の旨味
シャリの酸味と甘味が、この甘味と実によく馴染み、軟らかいので適度に混ざり合い口中から消える。甘エビは実に完成の高い握りです。
生でいただくのが一般的な甘エビですが、寿司ネタでは昆布締めにすることも多く、一貫握るのに3日かかることもあるとか!
甘エビを冷えた塩水で洗い、一つ一つ皮を剥き、塩を当てて少し置き、そこから酒で綺麗に拭いた昆布で締め、3日程度熟成させます。
下処理してから熟成して3日たつと旨味が強くなるんだとか。
手間のかかった一貫を是非味わいたいものです。
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ズワイガニ・ベニズワイガニ
オス・メスで味わう部位も食べごろも違う!
ズワイ蟹は、漁が行われる冬が旬です。産地は兵庫県が一番多く、次いで鳥取県・石川県・福井県と続きます。ロシアで獲れたものも輸入されますが、国産のものは松葉ガニや越前ガニとしてブランド化されています。解禁間もない11月頃は価格も高いため、食べ頃の旬はまさに今!オスが3月上旬くらいまで、メスは1月初旬までが食べ頃です。
ズワイガニの味の特徴はしっかりした身と、上品な甘みや旨みで、カニミソは濃厚で旨みが凝縮され様々な調理法に適しています。殻に付いている黒くて硬い粒は、カニビルの卵です。これがついているズワイガニは、脱皮をしてから日が経っており、身が詰まっている証です。オスとメスとでは、まったく味が異なり、別のカニと呼ばれるほど。メスのほうが味は落ちると言われていますが、卵である内子とミソはオスにはないあじわいで、とても美味です。
1月は紅ズワイガニも旬です。日本海側で主に食べられている紅ズワイガニは富山湾の味覚の女王と言われ、癖になる上品で自然な甘みが魅力です。
ズワイガニに比べ水分を多く含んでいるので値段は安いのですが、これこそが鮨ネタに合うという通もいるほどです。
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鮨ネタに合うのはズワイガニより紅ズワイガニ!?
ブランド化され、高級なイメージのあるズワイガニ。水分が少ないので実はシャリとのなじみが悪く、握るには海苔帯で止めることが必須です。
その点身が水っぽい紅ズワイガニは鮨ネタにちょうど良く、紅ズワイの方を好む寿司屋や通も多いとか。舌に残る甘さなど本ズワイガニに決して引けを取らない味です。
紅ズワイは、腕の付け根や味噌のなかに泥やゴミがいっぱい入っているので、全部切ってキレイに水洗いしてから脚は茹で、甲羅は蒸すのが正しい調理法。
日本海側ではポピュラーで庶民的なカニですが、正しい調理法で紅ズワイを出しているお店は、東京には少ないとか。
お店で出会ったら是非味わってみたい鮨ネタです!
出典:ぼうずコンニャクのWEB寿司図鑑、クックドア、SmartFlash
赤貝
ヒモは身よりも美味!?珍味としても存在感抜群の高級貝
寿司や刺身として定番の人気がある赤貝は、見た目も色鮮やかな赤とプリプリとしたしなやかな歯ごたえが特徴です。さわやかな磯の香りが漂う中にほのかな甘みを楽しめます。
赤貝の身が赤い理由は、ヘモグロビンを豊富に含んでいるためです。ヘモグロビンには鉄分の栄養成分が多く含まれており、貧血を予防する効果があります。またビタミン12の栄養成分も豊富で、こちらも貧血予防の効能があります。赤貝は他にも葉酸、ビタミンA・Bの栄養成分も豊富に含んでおり、貧血だけでなく健康にも良い栄養成分をたくさん持つ優れた食品といえます。
旬の時期は冬から初春にかけての寒い時期、11月~3月頃が最も美味しいとされています。旬の時期の赤貝は産卵に向けて、身が大きく成長しています。
旬の赤貝は、お刺身がもっともおいしく貝の風味が強く味わえ、コリコリとした独特の歯ごたえが楽しめます。また貝のヒモは身よりもおいしいともされ、珍味として巻物や軍艦、和え物などにして食されます。
美味しい赤貝の選び方は、殻が薄くて固く口を閉じているもので、持った時に重みのあるものを選ぶのがおすすめです。美味しいむき身の選び方は、色鮮やかで濃いものを選びます。また、身が厚くてふっくらと盛り上がっているものを選ぶのが美味しい選び方です。
「玉」と呼ばれ江戸っ子に愛される江戸前鮨の王
生食が美味しく、お酢と相性が良い赤貝は寿司ネタに適した食材!
寿司ネタの赤貝は「玉」と呼ばれて、基本的に赤貝は握り寿司です。朱色の赤貝と白いシャリが食欲をそそります。
赤貝の寿司は握りで食べることが多く、プリプリの食感と磯の香り、ほんのりとした甘みと引き締まった酢飯の相性が良く美味しい食べ方です。ほろ苦さがあり適度なクセが好きな人も多いのではないしょうか。旬の時期には、特に食感が良くクセになる美味しさです。
マダコ
エサによって味が大きく変わる唯一の生き物
高級ダコとして知られるマダコ。その理由は「身の締まり」と「濃厚な旨味」、しっかりとした歯ごたえと味わいが特徴です。
マダコの旬は11月〜1月の冬の時期で、南三陸志津川湾で水揚されるタコは、上質なエサを食べ旨味が凝縮しているため「東の横綱」と呼ばれています。
タコはそのエサによって味が大きく変わる唯一の生き物として知られています。そのため、生息地域のエサの種類によって味に違いがあるのが特徴です。
南三陸志津川湾のマダコはアワビを主食として育つと言われているとか!
今の時期旬を迎えるのは東北地方のマダコ。
マダコにはこれという産卵期がなく、地域によって変異が大きい上、周年産卵行動が見られるようなところもあるようです。そのためマダコの旬は魚のように「産卵期である/ない」ことで決まることはなく、その土地々々の「食文化」によって決まるという説も。
噛みしめるほどに旨味が満ちる江戸前鮨の華
マダコは江戸前鮨でも馴染の鮨ネタです。
むっちり弾力がありつつも、歯切れがよく柔らか。噛みしめるほどに旨味が満ちてくる旬のマダコは格別です。
さっぱりと煮切り醤油も良いですが、伝統のツメで提供される店も。
マダコはゆでる前の下処理が肝心で、かなりの重労働。
活のタコは内臓を取り出し、包丁を入れて頭の付け根にある目玉を取り除く。洗い桶に入れ、適量の塩を振ってから両手を使ってしっかりと全体をひたすら揉んでいきます。
本マグロ
国民的スシネタの王者、マグロの中の王者
いまや日本の国民食ともいわれているマグロ。一般庶民の食べる魚として定着したのは江戸時代だと言われています。
意外なことに、それまでは味がまずいというのが日本人の通念で、目もくれられなかったようです。
1810年江戸にようやく「にぎりずし」が出現しようとしていた頃、ちょうどマグロ大漁の記録が残されており、一説によると日本橋・馬喰町の「恵比寿ずし」という屋台店がためしにマグロをにぎってみたのが始まりになったとか!?
これが意外に旨く江戸っ子の人気をさらい、扱いとしては下魚であっても明治の頃にはもう「マグロがなくては商売ができない」とまでいわれるほど重要なすしダネとなったと言われています。
マグロの中でもマグロの王様と称されているのが、刺身や寿司のネタとしても好まれている「本マグロ」。一般的に日本近海で漁獲されている本マグロの旬の季節は、12~2月の冬です。マグロは栄養豊富で部位によっていろいろな味を楽しむことができます。
DHAの含有量が最も多く含まれている魚で、ビタミン類も豊富で鉄や亜鉛などのミネラルもたっぷり含まれています。
たんぱく質を多く含むのは赤身、ビタミンEを多く含むのはトロなど鉄やタウリン、ビタミンEを多く含むのは血合いと部位によって違いがあります。
赤身は香りが高く、中トロや大トロの脂はとろりと美味しく、マグロの頭部の部分を焼いた目玉や頭肉は赤身やトロと違った、独特の美味しさがありどこを食べても違う美味しさがあり、美味しさは香りや脂身のおかげです。
出典:オリーブオイルをひとまわし とれたてねっと Pokke いちえ
【江戸時代のマグロ握りとトロ】
江戸時代に食されるようになったマグロですが、当初から明治半ばに至るまでの調理法は一貫してしょう油に漬ける「ヅケ」であり、それにはもっぱら脂肪の少ない赤身の部分が使われました。
当時トロはもっとも価値のない部分で、高級店は背の身のほうから選び、万一腹の身しかないときには、脂肪の多い部分を切って魚河岸に引きとってもらったとか。
トロが好まれだしたのは昭和五、六年頃安い屋台店の客の間からだと言われています。
【トロ発祥の店『吉野鮨』】
トロの握りが発祥したのは現在日本橋にある老舗鮨店『吉野鮨』だと言われています。
2代目大将の頃、マグロが不漁で赤身を買う資金がなかったときに、傷みやすい上に脂が多く、廃棄処分されることの多かった腹身の部分を購入して握ってみたのがはじまりだとか。最初は名前がなく、“アブ”“だんだら”などと呼ばれていたそうですが、『口の中でとろっとするから、トロにしよう』というお客様の声で決まったと言われています。
【どこを食べても美味しい本マグロ】
マグロはどこの部位を食べても美味しいですが、寿司店では比較しながら味を楽しむことができます。
マグロ本来の旨みを感じられる赤身、脂の量の違いによる中トロや大トロ、マグロの切り身にわさびを添え酢飯と海苔で巻いた鉄火やエラの下にある希少部位でまるで霜降り肉のようなカマトロなどたまりません。
文・編集 SUSHITIMES