SUSHI TIMES

ミシュランガイド掲載店・星の数はどう決まる?調査員の仕事を詳しく解説

ミシュランガイドの歴史

ミシュランは出版社ではなく、フランスの有名なタイヤメーカーです。ドライブ文化が広がりつつあった20世紀初頭、1900年にドライブに役立つ、車の修理工場、ガソリンスタンドやホテルの紹介を無料で配布するためのガイドとしてスタートしました。1926年にミシュランガイドは有料本になり、料理を提供するホテルに星をつける現在のスタイルが出来上がりました。2005年にニューヨーク版、2007年に東京版を発表し、世界的に発展するようになったのです。

どうやって調査員になるの?調査員の正体は?

匿名調査員は、全員が特殊訓練を受けたミシュランの社員。一般のお客様に紛れ世界中の飲食店に足を運んでいます。フルタイムの仕事として一週間に10食以上も調査をするという予想以上にハードなお仕事です。 調査員になるには、5~10年ホテルやレストラン業界を経験し、数か月間フランスで世界統一の評価基準で調査・評価できるよう厳しいトレーニングを受けるそうです。その後は先輩調査員の指導のもとで経験を積みます。特殊訓練を乗りこえた限られた人だけが、ミシュランの調査員になれるのです。 そして、身近な家族だけがその職業を知り、友人には職業を偽っているそうです。そこまでこだわったミシュラン調査員のお仕事だからこそ、その評価基準も厳しくなるのは当然かもしれません。

調査員の仕事は、フルタイム

調査員は世界中を渡り歩き、ミシュランは彼らに対価を支払っています。日本やニューヨーク、ミラノへ送り出され、世界レベルの基準を身につける調査員。もちろん仕事はフルタイムです。明けても暮れても仕事に没頭し、仕事がライフスタイルになります。調査員になりたいと思ったことがある人も少なくないのでは。しかし、調査員としての業務のハードさに、すぐ辞めてしまう人もいるそうです。調査員は毎日ホテルやレストランを点々とします。昼はリストにあるレストランで食事をし、夜はホテルに泊まる生活。週末にしか家に帰ることはできないのだそうです。家族を持っても、その生活は複雑そのもの。ミシュランの調査員をしていると知っているのは近い家族だけ。友達などには職業を偽っているのだそうです。ミシュランの調査員は華やかそうに見えて実際は孤独な職業なのです。

レストラン側は調査員が来ることを知らない

ミシュランは完全に独立しているので、調査員はもちろん食事代金を払っています。お客さんと同じ体験をし、調査員の匿名性を守るため、調査員は全国的に移動させられています。予約をする時にはあえて異なる名前と電話番号を使うようにしているそうです。

ハードな調査員の仕事 1週間で10回の外食も

少なくとも1人の調査員が毎日どこかのレストランを訪れています。世界中の高級レストランで食事をしていますが、家に帰れば普通の食事をしているそうです。毎日高級レストランの食事では身体が持たないですよね。

調査員は“食とサービス”を熟知

多くの調査員はホテルスクールを卒業していて、彼らはその業界の基礎を習得してトレーニングを受け、長年の就業経験もあります。ほとんどの調査員がシェフで、食に関する知見が豊富で飲食店を知り尽くしている人が選ばれています。

『ミシュランガイド』掲載までの道のりは意外とシンプル

シンプルに美味しい食事を提供するお店ならどんなお店でも『ミシュランガイド』に掲載される可能性があります。『ミシュランガイド』ホテル、ゲストハウス、ブラッセリー、ビストロ、パブ、様々な異なる形態のレストランを取り上げています。掲載を決めるのは美味しい食事か、そして金額に見合う価値なのか、それだけです。『星』を取るのはさらに1ランク上のレベルの話になりますが、考え方は同じです。何よりも『美味しい食事』が大切なのです。とは言え、決まった公式があるわけではないので星を獲得することは大変難しいことです。豪華レストランからカジュアルな街の食堂まで、幅広いタイプのお店が同じ土俵に立っているのは間違いありません。

「星」の基準

ミシュランの調査員は何を基準にして星を与えるのでしょうか。ミシュランの日本のサイトによると、

ミシュランガイドの星は、(1)素材の質(2)調理技術の高さと味付けの完成度(3)独創性(4)コストパフォーマンス(5)常に安定した料理全体の一貫性という5つのポイントについて評価されています。
そして、その星の意味するところとは、
三つ星 そのために旅行する価値がある卓越した料理
二つ星 遠回りしてでも訪れる価値がある素晴らしい料理
一つ星 そのカテゴリーで特においしい料理

(MICHELIN/ミシュランガイドについてより引用)

とあります。

しかし、ミシュランガイドはいつも論争の的になっています。大きな問題と言われているのが、これらの評価の基準も実は曖昧だということ。実際何故このレストランが三ツ星を獲得し続けるのかという批判もフランスでは頻繁におこなわれています。

もちろん、レストランの味を同一に評価はできません。ただ近年は星を獲得するのはいつも同じお店でお決まりのパターンのように、マンネリ化されている感があるようです。また調査員は実際にレストランにはあまり訪れないのではないか、という疑問ももたれています。それで正当な評価ができているのかとフランスのメディアはミシュランを批判する風潮にあります。

ミシュランの徹底した秘密主義

星付きレストランの評価の執筆はミシュランの会社でのみおこなわれます。例えば、その原稿を印刷するのもメールで送るのも禁止。最終原稿は3人の社員によってのみ読まれるのだそうです。印刷する際も、機密書類として扱われるそうで、印刷所の職員も口外禁止のサインをさせられるという徹底ぶりです。店頭に販売されるまで、ミシュランガイドが人目に触れることは最小限におさえるという秘密主義なのです。
ミシュランガイドは謎のベールに包まれています。星を獲得するのは名誉なことであるけれど、ミシュランの星を拒否するレストランもあるほどです。最近では誰もが評価に参加出来るトリップアドバイザーの方が信じられるという意見もあるほどです。

不満を持つシェフに対しては?

基本的に、星を獲得できなかった、星を下げられたことについてのレストラン側の不満に『ミシュランガイド』としては答えていないそうです。
「私たちはコンサルタントではありませんし、定期的にコメントを出すこともありません。オープンに話すことはありますが、ミシュランは独立した組織であるため、常にレストランとの“距離”は維持しています』とミシュラン側は語っています。

星を維持する重圧感と難しさ

ミシュランの星を維持するのは極めて難しく、ここ数年、星を返上するレストランも相次ぎました。六本木の【鮨さいとう】の星返上は皆さんご存知のはず。ミシュランガイドに掲載されたいという願望の裏には、星を維持していくという過度のプレッシャーがかかります。ミシュランの星を取得する難しさと共に、継続する難しさも避けては通れない事実と言えるでしょう。


参考記事
https://www.harpersbazaar.com/jp/lifestyle/gourmet/g151470/lda-michelin-guide-food-inspector-secret-life-171108-hns/?slide=1
https://agrevo-health-foods.com/blogs/news/michelin-star-survey
https://tabizine.jp/2016/06/20/80403/